| 社側 |
日本初の私鉄が大阪で開業し、しかもその鉄道が南海電鉄の前身、阪堺鉄道である事はあまり知られていない。日本の私鉄の歴史の“出発地”が関西、しかも地元大阪であることを誇りに思う気持ちから取材を開始した。番組構成としては、開業当時の機関車を擬人化してナレーター役として登場させ、現存する資料や証言を多く盛り込んだ。さらにラジオの特性を活かすべく、機関車の走る音、馴染みある唱歌や花火の音などを使い、「電車」の持つ多様なイメージをリスナー自身に膨らませてもらえるよう心掛けた。 |
(2)
| 委員 |
100年以上も昔の出来事を題材としているが、当時の社会情勢が良く分かる。資料集めには苦労しただろう。初めて知ることも多く、興味深く聴かせてもらった。機関車を擬人化しナレーターとした演出、そのナレーションに大阪弁を用いるなど、音だけで情報を伝えるラジオならではの工夫が凝らされている。ただ、他の在阪私鉄の場合はどうだったのか。その後に誕生する私鉄との比較があればより面白い仕上がりになったと思う。 |
| 委員 |
様々なエピソードが随所に盛り込まれており、新鮮な驚きとともに楽しめた。その理由として、テーマ設定の成功が挙げられると思う。松本重太郎とはどのような人物だったのか。大阪の人々にも忘れ去られている、むしろ大多数の人が全く知らないと言っても過言ではない——そういった人物を歴史の中から発掘し、光を当て、テーマとして設定したことは評価に値する。
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| (2) |
| 委員 |
テンポが良く、聴き易かった。擬人化された機関車による大阪弁のナレーションとその合間に挿入されるアナウンサーによる補足説明——この“2本立て”の手法が相互補完的に絡み合い、聴き易い番組に仕上がっている。 |
| 委員 |
大阪弁のナレーション部分と、ひと昔前のニュースのような淡々とした口調で進む標準語の解説部分が対照的で面白い。ただ、ナレーターの役割を担う機関車は釜石で製造されたというくだりがあったが、なぜ釜石出身でありながら大阪弁を喋るのか。大阪弁であることの必然性がいまひとつ明確でない。 |
| 委員 |
主人公である松本重太郎は当時、東の渋沢栄一と並び称される人物だったということだが、現代における認知度では大きな差がある。その理由についての検証があってもよかったのではないか。 |
| 社側 |
重太郎は当時関西の経済界で大きな成功を収めた人物であることは確かだが、晩年に破産を経験している。日本には成功の末に一時代を築いた者であっても、その晩年に失敗があればあまり歴史に名が残らない傾向がある。そのことも理由のひとつとして考えられる。 |
| 委員 |
機関車を擬人化し、ナレーターとしての役割を付与した創意工夫があり、メリハリも利いており面白い番組だった。賞(平成17年度日本民間放送連盟近畿地区最優秀賞 ラジオ教養番組部門)を獲ったことも頷ける。大阪の歴史に密着した番組であり、地元大阪の名を冠したラジオ大阪が制作するに相応しい作品だ。ただ、ナレーションとして大阪弁を活用したこと自体は良いが、その大阪弁が若干不自然だったように思う。 |
| 社側 |
今回ナレーターとして配役した落語家には、用意した台本をもとに自らの言葉でアレンジを加えた喋りを期待していたが、そこに行き着かなかった。演者自身に原稿を忠実に追っていこうという意思が強く出た結果として、違和感のある大阪弁に繋がったのではないか。 |
| 委員 |
作中における扱いとして松本重太郎の比重が小さかったような気がするものの、最後まで一気に聴ける面白い番組だった。ただ、他の私鉄の場合はどうだったのか——その概説、概論があればリスナーの関心をより強く惹きつける作品になったのではないか。 |
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| 委員 |
松本重太郎という人物像の掘り下げが中途半端なのが残念だ。今後のシリーズ化に期待をしたい。その際には、東京と大阪とでは私鉄文化に大きな差異があるが、大阪の地にいかにして東京と全く違う私鉄文化が築かれていったのかという点についての分析を是非盛り込んで欲しい。 |
| 委員 |
番組の意図は良く分かるが、やや焦点が絞り切れていないという印象を受ける。鉄道事業、近代大阪黎明期の活力、現在のJR西日本への風刺、松本重太郎の生涯などはいずれも中身あるテーマだが、それらを一度に盛り込みすぎたあまり、かえって平板な内容になってしまっているように感じた。郊外移住の流れが転機を迎えつつある今、私鉄各社のサバイバルは重要なテーマだけに、今回のような企画は是非シリーズで聴いてみたい。
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| 社側 |
取材を進めていく過程で知り得た情報全てを時間の制約のなかに消化し切れなかったことは事実だ。 |
| 委員 |
これまで取り上げられることの少なかった興味深い題材を扱っており惹き込まれた。総論的に良質な番組だと思う。文化的にも十分研究に値する明治の大阪を舞台とした、番組のシリーズ化に期待している。 |
| 委員 |
メディアのデジタル化や多端末化の時代的潮流の中で、「ソフト」や「コンテンツ」
といった大きな概念のなかに、本来独立した存在であるべき「番組」という概念が
埋没しつつある。「ソフト」や「コンテンツ」ではなく、「番組」という概念に再
度立ち返り、かつ大切に守っていくことこそ、これからのラジオメディアにとって
の重要な課題だ。これからも語り部としての役割をラジオは果たしていって欲しい。 |
| 社側 |
貴重なご意見ありがとうございました。 |